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志和浩司/フォトグラファー、フォトリポーター

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はちみつシアター新作「25528+」イベント要素取り入れ楽しい舞台!

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OLヴィーナスはちみつシアター1年ぶりの新作「25528+」(にまんごせんごひゃくにじゅうはちから)が7月8日、東京・中野のテアトルBONBONで初日を迎えた。12日までの5日間、再びはちみつエキスたっぷりな公演で楽しませてくれる。

今回も客演含め14名のキャストはオール女性(ただし1名はニューハーフ)で、3チームに分かれている。同じ部品を作り、つなぎ合わせる仕事をしている、工場ではたらく女子=「工場女子」。そして「新日本(しんにっぽん)」「キャットヒス」。平凡な日々を送っていた「工場女子」が、あるとき動画サイトに「工場女子が踊ってみた」をアップしたことから七転八倒の物語が始まる。未来の日本では、戦争や武器が全面禁止になっており、紛争の決着はダンスでつけることになっていた。そんな世の中では、身体能力に勝るネコが人間を圧倒している。そこで、「工場女子」のダンス動画に目をつけた「新日本」が過去にタイムスリップして彼女たちをスカウトへ…。闘い、正義、誘拐。平和で平凡な日々を取り戻すため、過去と未来、そして2015を行き交うはちみつシアターのタイムスリップストーリー。

今回は、各キャストに役者になったきっかけも含め、チームごとに話を聞いた。

【工場女子】

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若尾桂子 ももえ
地味でネクラで、ちょっとオタクでコミュ障な感じのパッとしない女の子

作品について…「基本的に工場女子はみんなバカなんですよ(笑)。普通の女の子たちなので、共感してもらえるんじゃないかなと思います。これまで出たはちみつさんの舞台の中で、こんなパッとしない子が主人公なのは初めてなんじゃないかなと。どこまでパッとしないでいられるか。本番までにもっと気配を消します(笑)」

役者になったきっかけ…「もともと『幽遊白書』『セーラームーン』『るろうに剣心』『エヴァンゲリオン』などアニメがすごい好きで、キャラクターに声を吹き込める声優になりたかった。親に言ったら、大学に入らないと声優にはなれないと嘘をつかれ(笑)、勉強が嫌いだったからあきらめたんですけど、ダンスが好きだったので専門学校に行ったんです。そこで演技のレッスンを受けたら、先生から『お前は役者やったほうがいいぞ』って言われて。あとは、山口智子さんにも影響を受けました。中学のとき『ロングバケーション』がドンピシャで、めっちゃ山口さんが好きな女優さんで、あこがれたのもきっかけだったと思います。ダンスボーカルユニット・4Ccrewとしても活動しています。そちらはだいたい週一回ライブしています。はちみつさんを見てファンになってくださった方がライブにもきていただいたり、その逆だったり。来年はお芝居に集中したいので、はちみつさんの公演には意地でも出たいし、ほかのカンパニーさんにも声をかけてもらえれば。あとはナレーションやラジオのパーソナリティとか、声を使った仕事ももともとの夢なので、やれたらいいなと思います」

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中塚智実 さおり
人に厳しくて結構口も悪いが、熱いところもある女の子

作品について…「はちみつさんの舞台は初めてですが、稽古していて楽しいです。(はちみつの)お姉さんたちがパワフルなので、負けじとついていくんですけど、もっと出さなきゃ!と思って。私、結構冷静なほうなので」

役者になったきっかけ…「 AKB48のときに、AKB歌劇団に出て、ああ、これ楽しいと思って。それまでお芝居に興味なかったんですけど、面白くて、お芝居ってこんなに楽しいのかと。近年、いろいろ舞台にも立たせてもらうようになって。AKBでの体験が役立っているかどうかは……いろいろ生かせることもあります。もともと私はダンスもまったく踊れなかった、まったくド素人だったので。これからは、まだお芝居を楽しんでやっていたいし、私も声優でも頑張っていきたいっていうのもあるし、まだまだいろんなことをやりたいですね。正直、具体的な夢とかはあまりなくて、いまが楽しいから、その楽しさを大切にやっていたいですね」

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田渕恭子 あまち
工場女子の一番先輩。いつもおかしなことをいってみんなに無視をされている

作品について…「一場の冒頭、前代未聞のありえないかっこうでお迎えするので注目してください。前代未聞じゃないかなって。明転した瞬間、『え!?』って(笑)。笑いのツボ的には一発目からおさえているんで。体を張ってます。今回も全員女性で、最初はふわふわ探り探りでしたが、芝居ができあがっていく中で、工場女子もチームワークが出てきましたね。楽しい女子組になりました」

役者になったきっかけ…「関西出身で、宝塚が初めて観た舞台だったんです。小学校のとき、それでズドーン!とはまって。高校で演劇部に入り、ダンスの専門学校に行きました。東京に出てきて養成所に入れなくて、でも芝居やりたいから『よし、劇団つくろう!』って、はちみつシアターの前身の劇団を氏家(康介)とつくったんです。そこにぐんみ(郡司みわ)もいて。でも解散しちゃって、そのあと、はちみつシアターを立ち上げて。年齢も年齢なので、とりあえず舞台を中心に続けていきたいなとすごく思っていますね。あとは声のお仕事も」

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Ma-yu めぐみ
ギャルで、真面目なのか不真面目なのか謎な感じの女の子

作品について…「今回もはちみつシアターさんに出せていただいて、楽しくやっています。私は、はちみつさん以外では芝居をしたくないっていうぐらい、はちみつシアターさんが最高だなと思っています」

役者になったきっかけ…「私はもともと音楽がメインなのですが、人生で初めて舞台に出たのが『チェンジング★ホテル』(2013年、アリスインプロジェクトとのコラボ)だったんです。そのとき氏家さんにいろいろ教えてもらって、『あなたは演技できるよ』って言われて、自信が持てるようになれて。そこから歌にも表現力が出てきたかなと思って、演技って歌にもつながるし、めちゃくちゃ楽しいなと思って。はちみつシアターさんは、劇団のみんながすごく性格がいいから、ゲストのみんなもいい子しかこない。これからもはちみつさんの舞台に出たり、メインの音楽ではいろいろタイアップとったり、武道館を目指していきたいなと思っています」

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郡司みわ るみこ
パワフルでエネルギッシュ、みんなのボケを回収しつつ自分もボケる

作品について…「るみこはパワフルでエネルギッシュで、みんなのボケを回収しつつ自分もボケるというキャラクターなんですけど、けっして物語をまわしているわけではないんです。だけど、皆さんが落としていったものを全部拾っていく、それを力強くやっていくという」

役者になったきっかけ…「中学のとき、ふるさとキャラバンっていう旅公演しているミュージカル団体を観て、『これ、やりたい!』と思ったんですよ。剣道部だったんで、高校に入ったら演劇部に入ろうと思っていたんですけど、演劇部がない高校に行ってしまったんですね。あっさりあきらめたんですけど、進路を決めるとき、やりたいことがなくて、ぽろっと『お芝居やりたいです』と言ってしまい、ミュージカルの専門学校に入ってしまい(笑)。未経験でポーンと入って2年間やって、『ミュージカルはできないなあ』ってボーッとしてるとき、はちみつの前身の劇団に出させてもらうことになって。これからは、体力と精神力が持つ限り、お芝居をやりたい。すごく歳をとっても、その歳なりにあった舞台女優さんになれていたら理想だなって」

【新日本】(しんにっぽん)

秋元佐和紀 リニア役

秋元佐和紀 リニア
新日本の副リーダー的な位置にいる謎の人物

作品について…「いつもはちみつは、ラストのショーに向かい芝居が流れていくのですが、今回は戦いの場がショーになる。前半部分は武器を持たない人たちがダンスで戦いを見せるので、いつもとは違うはちみつのショーの雰囲気を味わっていただけます」

役者になったきっかけ…「相当ちゃらんぽらんな理由で、大学受験のとき、演劇専攻のある大学の受験が2科目受験で楽だったという(笑)。ぜんぜん芝居やったことがないのに、突然大学で演劇専攻に進み、でもやり始めたら夢中になって、そのままずっと続けているという状態です。将来は、はちみつシアターで、大きな小屋で芝居+イベントのはちみつスタイルで一発どかんとやりたいですね。小さいところでお客さんとふれあえる場も続けたいのですが、1日限りの大きなお祭りみたいなこともやりたいなというのがあります」

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のもとあき セグウェイ
新日本の表面上、全部を引っ張り宝を守る。強く、勝つためには手段を選ばない

作品について…「新日本は他のグループより人数も少ないし、ミステリアスな感じで、話の中でもキーポイント的な位置にいるので注目してください。私は若干、いつもより陰っぽい部分もありつつ、どちらかというと悪い感じの役です。初めてなんですよね、ここまで悪そうな役(笑)。楽しいです。気持ちいいですよね」

役者になったきっかけ…「小学校3年生のとき、学芸会で褒められたんです。ちょうちょの役で主役でした。そこからしばらく芝居のことは忘れて、運動をやったりしていたんです。うちは転勤族だったので、札幌にいたり水戸にいたりしたんですが、結局、東京に行きたいなと思ったとき親の金で東京出るなら大学しかないなあと(笑)。で、2科目で受験できる演劇専攻を選んで。自分的にはヒロインタイプではないので、いろんな役にパッとはまれる役者になりたいなあと思っています。チャレンジしたい役? 本当に冷酷非道な役とかやってみたいですね」

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塩澤葉子 シトロエン
一番下っ端でリニアとセグウェイにこき使われている

作品について…「はちみつさんは今回が初めてで、こんなにわーっとハッピーな気持ちになれるなんて、驚きました。そこが見どころですね。新日本というグループにも注目して見てほしい。男性がいないことで雰囲気がまったくほかの現場と違う。さばさばしている人が多いから、すごく心地いいです」

役者になったきっかけ…「小学生のころ観劇に行って、観るだけじゃなく立ちたいなと思った。舞台やテレビに出て、いつかテロップに名前が出るのが夢で、小学生のころから活動していました。高校卒業後に演劇の専門学校に入り、以来ずっとお芝居をやっています。私はステージに立つのが好きなので、できればステージアクトでやっていきたいですね。あこがれの役者? ずっと上戸彩さんが好き。金八先生で性同一性障害の役をやっていたときの上戸さんがすごく好きで、それからずっとあこがれています。フォルムとか、体のラインにもあこがれるし、いま結婚して幸せになって、みたいなところにもあこがれる。そのままドラマにも出続けて、努力家でストイックなところにもあこがれますね」

【キャットヒス】

氏家康介 チンチラ (巣鴨五反田名義で脚本・演出も)
キャットヒスのボスで、あまり群れていないが、なんとなくみんなのことを思っている

作品について…「キャットヒスは、別名ルドビコ(私立ルドビコ女学院)組で、ルドビコ組が3人いるんですよ。その3人以外ははちみつシアターなんです。夢のコラボレーションみたいな。ネコなので感情移入しにくいと思うんですけど、性格的なものは本当にわかりやすいぐらいバラバラなので、あの子いいな、あの子嫌いだな、というふうに認識しやすいと思います。なぜネコになったのかという部分や、ネコとして暮らして、争っていくんですけど、その争いはなんで起こったのかという部分が、なんとなくみんなの現実とリンクしていけば、そこは感情移入できる部分かなと」

役者になったきっかけ…「はちみつの前身の劇団までは、芝居したことも観たこともなかった。でも高校生のとき地元のテレビでレギュラーを持っていたりしたので、人前に出ることは好きだったんでしょうね。その流れでうちの座長(田渕)に誘われて、出だしたんですけど、最初はそこまで楽しいのかな楽しくないのかわからなくて、で、いったんやめたんですよ。劇団も解散して、なくして初めて、楽しかったんだと気づいて。それで自分でオーディション受けたりしている中で秋元(佐和紀)さんとかと出会い、そのまま続けている。だから自分が演出したり脚本書くなんてまったく思ってなかった。いまだにビックリしてます。今回、最後の日にショーだけを切り取って、本公演とは別にライブ・イベントをするんですよ。一回、芝居がなくてライブだけというのをやってみたいなと思いますね。体力が持つのかなとか(笑)。ニューハーフとかゲイの子って、女の子のグループアイドルが好きなんですよ。私も結構好きで。自分が女の子の団体の中に入るとは思ってなかったんですけど、なんの因果かそこで踊っていたりしていて。不思議」

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今吉めぐみ シャム
みんなをまとめているが、みんなが自由なのでいろいろ葛藤を持つリーダー

作品について…「はちみつさんは、本当に居心地がよくて。女ならではのギスギス感が本当なくて。それは氏家さんがいるからだと思うんですけど(笑)。皆さんやさしくしてくださって甘えられる、安心してよりかかっています(笑)」

役者になったきっかけ…「最初はSDN48で大人のアイドルやっていたんですけど、解散してどうしようかなと思っていたとき、ドラマ観ていたんですね。女優さんって、いろいろな人物になれるじゃないですか? 看護師さんになれたり、客室乗務員になれたり、普通の主婦とか。アホみたいな理由なんですけど、いろいろ経験できるのがすごく楽しそうな職業にみえて、女優さん目指したいなって。まさかネコをやるとは思わなかったですけど(笑)。これからは、もっと芝居を深めて技術もつけて、ミュージカルとかもいっぱい出れるようになりたいなと思ってます」

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岡野里咲 アメショー
自分が大好きでのんびり屋さんのネコ

作品について…「岡野自身からすると嫌いな女の子のタイプを演じています(笑)」

役者になったきっかけ…「最初は芸能の仕事について考えたことがなくて、受験のとき、お父さん側のおじいちゃんおばあちゃんが割とまじめなほうで、大学は出てほしいということだったんですけど、落ちまして(笑)。勉強も嫌いだし、お母さんとどうしようと。とりあえず後期でもう一度受けるか、他の道を探すか。もともとナレーションのお仕事をしたいなというのがあって、専門学校に入ったんです。声優や俳優のコースもクラスが一緒で、私も芝居の授業が必須で、そこで芝居は楽しいと思って、学校やめて、稼いで上京してきました。もともと人見知りで人前に立つのも無理だったんで、だから不思議ですね。親もたぶんビックリしていると思います。これからも役者としてずっとやっていきたいですね。舞台だけじゃなく、映画やドラマにも出てみたい」

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前園幸子 ソマリ
一番甘えん坊で泣き虫なネコ

役者になったきっかけ…「小学校の3年か4年のときアニメ『ガラスの仮面』で気持ちがふくれあがって、中学で演劇部に入ったんです。ところが1ヵ月で引っ越しになり、その先では演劇が続けられなくて。もともと両親は学歴の高いカップルで、演劇なんてお金の稼げない仕事をする人たちはダメだ、というものがすごくあって、猛反対。だんだん親と仲が悪くなってしまい、18歳ぐらいのときに家出をしたんです。親からも離れてるわけだから好きなことができるんだと気づいて、そこからお芝居を始めた。誰も知らないようなところへお芝居を観に行って、折込チラシのキャスティング募集のところをたずねて、だんだん人づてでつないでいって今に至るので、こんなに長く続けられるとは思っていなかった。いまは両親もすごく応援してくれています。去年、おととしかな、もう十年やれたので、そこが自分のなかですごい節目で。いい人たちに出会ったからここまで続けてこられたんだなと思いますね。これまではお客さんの喜んでくれることを一番に優先してきたんです。それはそれでいいことだけど、本当に自分が好きなことをもうちょっと無神経になってでも表現したい、そうすれば殻が破れるかなっていうのがあるんですね」

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木村若菜 三毛太夫
一生懸命、自分の思うままそのときそのときを生きているネコ

作品について…「見どころはですね、私のメイクも見てほしいんですが、キャットヒスあってのこの作品だと思うので(笑)、感情移入してくれるといいなと思います」

役者になったきっかけ…「高校最後の年に宝塚歌劇団が好きで受けたんですけど、落ちたんです。何しようかなと思ったとき、2教科で受けられる音楽の大学を探したら、大阪芸術大学の声楽科があったので、そこへ入り、大学院も行きました。6年ぐらい歌を勉強した。歌って、演技とか感情表現が必要なので、演技の勉強をしたいなと思ってお芝居の道に入りました。まだまだ演技のレベルを高めていけたらなと思っているので、勉強をしたいです。やってみたい役は、怒ったり、感情の強い役が得意な分野でもあるので、そうじゃない役を、繊細な役などをやりたいです」

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栗野未悠 ペルシャ
仲間でつるんでいるが、みんなのことを信用していないネコ

役者になったきっかけ…「小学校のとき榊原郁恵さんがやった『ピーターパン』を観て、舞台っていいなという感動があって。遠い存在だけど、こういう世界があるんだって思いが強かった。でも始めたのはすごく遅くて、高校卒業して専門学校に入ってからでした。高校は高校でしかできない部活をやって、そのあともちゃんとお金をもらいたいと思って職につきたいと思い、専門学校に行ったんです。ダブルスクールでミュージカルの学校にも行き、市民ミュージカルから芝居が始まりましたね。体動かすのが好きだから、ダンスや和太鼓もやっていました。で、ここ(はちみつシアター)に落ち着いたかなっていう。ダンスもやってるし、みんなをエンターテイナーとして楽しませるっていうのがいいなって。楽しめることが一番。体動かすことが好きだから、お芝居に役立つ運動をしたいなって思いますね」

Written by 志和浩司

2015/07/08 at 11:44 pm

「ロミミ」千秋楽…出来ることなら何公演も観たかった!

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はちみつシアター2年ぶりの本公演「ロミミ」(作・演出:巣鴨五反田、6月25日~29日・テアトルBONBON)は、文句なしに面白く、そして温かかった。はちみつらしく、ラストのライブショーに向けて一連の芝居が流れて行くエンターテインメントだ。定評ある衣裳の数々も、見事に華を添えている。

2年ぶりの本公演ということは、いつ頃発想した舞台なのだろうか。超絶エンターテインメント性の高い舞台ながら、フライヤーに躍った「絶対に、忘れちゃいけないことがある」とのコピーが根底にあるテーマを物語っている。「ロミミ」には、東日本大震災の犠牲者への哀悼の気持ちが込められていたのだ。まさかと思ったが、主人公アラヤン(若尾桂子)とは、震災の津波で亡くなった人物だったのだ。失われた命、取り返すことの出来ない時間の尊さ。開演前の陰アナ(氏家康介)が「演劇だからといって肩肘を張らずに見て欲しい」と念を押すように語っていたが、それは作品のテーマにふれやすくさせるための実に効果的な導入になっていた。まさに肩肘を張らずに楽しむエンターテインメントだからこそ伝えられる悲しさだったり、やるせなさだったり、儚さだったり、切なさだったり、というものもある。真面目なこと、重要なことを伝えるのに、何もシリアスなスタイルだけが有効なわけではない。さんざん笑えたからこそ、悲しさにもしんみりと感情移入出来る面もある。笑うと真面目にものを考えられなくなる人がいるのと同じく、笑わないと真面目にものを考えられない人もいるのだ。良質なエンターテインメントは必ず、シリアスな部分を内包しているものだ。

とはいえ「ロミミ」は9割方、楽しさから成り立っている。ただでさえ個性際立つはちみつシアターの面々に加え、集まった客演キャスト陣がまた個性豊かだ。

はちみつ初の試み、客演にして主演、若尾桂子の、まあ~可愛いこと! 大人の女性の可愛さに、つい見惚れてしまった。実際には、かなり思い切って崩した表情をたくさん見せてくれるのだが、それがかえって可愛い。地味なOL姿も可愛い顔が映えるが、歌とダンスのパフォーマンスで見せるアラビアの花嫁風の赤いダンス衣裳も華やかでとても良く似合っていた。

関口春菜は、前年5月にアリスインプロジェクトとはちみつシアターがコラボしたコメディ「チェンジング★ホテル」が舞台デビューだったはずだが、たった一年でこんなに進化したのか、とビックリさせられた。選んでいる舞台がいいのだろうか、着実に演技力が身についている。スラリとしたプロポーション、小さな顔。そして、性格の良さが表れている笑顔。「チェンジング~」の時、稽古場で初めて見て思わず一目惚れしてしまった。もともと典型的なモデルタイプの美しさが、今回の魔人役では魔人というより女神のような衣裳で引き立っていた。

高田あゆみは、キャナァーリ倶楽部結成時より芸能ニュースで何度も取材しているが、近年、活躍の主戦場としている舞台で、女優としてグングン磨かれてきた。その一挙手一投足を見ているだけで気持ちが楽しく弾んでしまうのは、スター性の高さの証。本当に表情が豊か。顔だけじゃなく、全身が表情になっているのだ。キャスト表にこの人の名前があるだけで、何かワクワクしてしまう。

岡野里咲と木村若菜は、実は4月に「私立ルドビコ女学院 最凶ガール」で見たばかり。岡野は昨秋、アリスインプロジェクトの「名探偵はじめました!」にもダブルキャストで出演、もともと可愛いし、存在感のある人だ。ゴブレイプロジェクトでもおなじみ。さらに、「新耳袋3」では顔に血糊を塗りたくっての熱演もあった。なんだかんだで岡野の舞台は、以前から数えるとかなり観ている計算になる。「ロミミ」では、頭が良くて努力家なのにバカっぽさもあるという役どころを演じていた。

木村若菜は、”舞台女優”であることを前面に掲げ、これまで多彩な舞台に出演してきた人だ。涼しげなルックスで、一見すると物静かな人に見えるが、こういうタイプの女優は実はとてつもない闘志とエネルギーの持ち主であることが多い。「ロミミ」でも、個性派揃いの他のキャストに負けてはならぬという意気込みを随所に感じた。

のもとあきは、大変、魅力的な女優だ。顔のつくりはどこからどう見ても日本人なのに、どこかエキゾチックなムードがある。「ロミミ」は、冒頭に書いた通りラストのショーに向かって一連の芝居が流れて行くはちみつシアターらしい作品だが、芝居であって、ある意味それ以上にショーである。のもとは、はちみつ常連だけあって、リズムの速いショーの中で確かな演技を見せ、見事に溶けこんでいた。

山本陽子は、OLとして働く日常の世界と、魔人が連れて行く世界では、まるきり別人のような振り幅を見せてくれた。稽古場取材から見せてくれた迫力と思い切りの良さは、まわりのキャストにも大受けしていたほど。のもと同様、はちみつではおなじみで、2007年8月の「ブリテリ・マイルーラ」のキャスト表から名前を発見できる。

馬渕史香は、登場するOLの中で一番エロっぽい役どころということだが、そこはかとなくエロスが出ていた。そしてエロの中に垣間見える素の馬渕が、しっかり良かった。一輪の花のようなキュートな女優だ。しばらく見とれて、表情を追ってしまった。リジッター企画の主宰でもあり、8月の「ミロウのヴィーナス」も必見だ。ちなみにリジッター企画とは、岐阜・名古屋でともに活動していた馬渕と中島庸介(脚本・演出)によって結成、2011年に舞踏家・森脇洋平(身体演出)が参加し現在の作風に至った。舞台でしかできない表現にこだわっているという。

鶴田葵は、1991年11月生まれの22歳、「ロミミ」ではなんと最年少キャストということになる。2013年5月の「チェンジング★ホテル」でご一緒してから、気になる女優だ。優秀なOL役なのだが、頭のいい人ならではの風変わりな面というのがよく表現されていたし、何より楽しそうに演じていた。ダブルダッチに挑んだ際の真剣な素の表情がまた、可愛かった。

はちみつシアター+ゲスト出演者、これだけの素敵なキャストが客席をも巻き込んで約2時間半のエンターテインメント空間をつくった。最後のMC、出来れば一年間ずっとこの公演をやっていたいとの言葉に、客席から大きな拍手が起きた。私も、今回スケジュールが許さず週末のソワレしか観ていないのだが、出来ることなら何公演も観てみたかった。

その気持ちは、次回のはちみつシアターにぶつけたい。ロイヤルでミラクルなミッション!素敵な極上のエンターテインメントに感謝。

 

【公演内容】

この作品は、願いが必ず叶います…

一生懸命、真っ直ぐさしか取り柄のない主人公のOLは、はっきりいって超不器用。
靴紐を結べば、必ず縦結びになるし。ストッキングをはけば、伸ばしすぎて電線。

もちろん会社でも、彼女の仕事はミスばかり…
いい加減、自分の不器用さに嫌気をさして訪れた、ある日の給湯室。
お茶汲みをしても失敗する彼女が、ポットに手をやったその時…
ポットからは光と煙が溢れだし…それとともに魔人が現れたのです!!
あり得ない状況に驚く彼女!
話かけてきた、魔人を真っ直ぐに見ることしかできません。

「お前の願いを、叶えてやろう…」

そう、いつものミスは、いつもと違う奇跡を彼女に起こしたのです!!
果たして、彼女の願いとは?
一体、魔人はなぜあらわれたのか?

不器用な人も、器用な人も、毎日をどこかつまらないと感じている人も…
全ての皆様に、暖かさと笑顔を届けるスペシャルファンタジー!!
社会人のあるあると夢のようなお話が、はちみつシアターだからこそできたOLアドベンチャー!!

彼女の不器用さを共に笑い飛ばしていきましょう!!

「ちょっと、おしっこもらしちゃった…」

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はちみつシアター「ロミミ」 前代未聞のOLアドベンチャー!

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20140617-DSC_2819前列左から岡野里咲、鶴田葵、若尾桂子(主演)、高田あゆみ、関口春菜 中列左から山本陽子、馬渕史香、木村若菜、のもとあき 後列左からはちみつシアター栗野未悠、秋元佐和紀、田渕恭子、氏家康介、郡司みわ、前園幸子

中野サンプラザ公演を目指す「OLヴィーナス はちみつシアター」にとって2年ぶりとなる新作本公演、「ロミミ」(作・演出/巣鴨五反田)の初日が迫っている。”絶対に、忘れちゃいけないことがある”をテーマに、劇場は中野でもサンプラザとは駅の反対側にあるテアトルBONBONで6月25日(水)~29日(日)まで上演される。

20140617-DSC_2149ヒロインは、一生懸命で真っ直ぐさしか取り柄のないOL、通称アラヤン。演じるのは若尾桂子。客演キャストが主演に抜擢されたのは、はちみつシアター初のことだ。超不器用で会社でもミスの連続、お茶汲みさえ満足にできない彼女が給湯室のポットに手をやったその時…なんと、「アラジンと魔法のランプ」ではないが、2人の魔人が出現! 「お金と時間をいただいて来場されたお客様を、徹底的に楽しませよう!」をモットーに、スピード感あふれる怒涛の会話劇とダンスショーを掲げるはちみつシアターならでは、抱腹絶倒&ファンタジックで見応えあるOLアドベンチャーが展開される。劇中でキャストたちがダブルダッチはじめ、さまざまなパフォーマンスにチャレンジするのも見どころだ。

20140617-DSC_2757キャストは、はちみつシアターの田渕恭子、氏家康介、郡司みわ、秋元佐和紀、栗野未悠、前園幸子はもちろんのこと、主演の若尾をはじめ客演の顔ぶれも充実。のもとあき、山本陽子、木村若菜、岡野里咲、馬渕史香、高田あゆみ、関口春菜、鶴田葵と、個性的で魅力あふれる女優が揃った。本番一週間前、そんな”女だらけの”熱い稽古場におじゃまし、一部キャストに話を聞いた。

シンプルなタイトルからしてインパクトあって、面白そうですよね。
氏家 今回は童話をモチーフに、OLたちが「アラジンと魔法のランプ」の世界観の中に飛び込んじゃったらどうなるかっていう感じでお話をつくっていたんですけど、どんどん違う方向へ行っちゃって(笑)。「アラジンと魔法のランプ」のモチーフは若干借りてるぐらいのお話にはなってるんですけど、OLと童話のアドベンチャー的な部分を加えてお話がつくられている、OLファンタジーという感じです。
これまでのはちみつシアターの中では異色作?
氏家 異色作というか、いろいろな要素がめちゃくちゃ含まれ過ぎていて、出ているキャストもたぶん大変だと思うし、演出している私が一番きついっていう(笑)。どうなっちゃうんだろうって、自分でもまだわからない部分がいっぱいあって。逆に言えば、まだまだふくらんで行けて、本番に一番いい形でお届けできるんじゃないかなと思います。

20140617-DSC_2104主演は、若尾桂子さんですよね。
氏家 はい。はちみつシアターとして、客演さんに主演してもらうのは初めてのことなんですよ。そこに今回、若尾さんが抜擢されたんですけど。
若尾 はちみつシアターさんのファンの方が持っているイメージもあるでしょうし、そういうのを壊しちゃいけないなっていうのも考えますよね。はちみつさんに出るのは4回目なんですけど、私のファンの方々がはちみつさんをすごい好きで、出演するのを喜んでくれているんですよね。それで、今回主演になったことで、ファンの方々にも「4回来い、5回来い」ってことで貢献出来たらいいなと思っていますけど(笑)。
主演ということで、これまでの客演とはやはりかなり違いますか?
若尾 稽古の時、出番が少ない時は端っこで寝てるタイプだったんですけど、今回は寝てる暇がないんですよ。アラヤンのテンションが一番大変ですね。声が高いので、それで持ってかれます。いつもははちみつさんの誰かが主役で、私はそれを支える側で、美味しいところをやらせてもらっていたんですけど(笑)、今回まさか主役とは思ってなくて。
氏家 美味しくないの?(笑)
若尾 いえいえ、美味しいです(笑)

20140617-DSC_2137魔人の役は秋元さんと関口さんですね。
氏家 OLなので、ランプではなくて給湯室にあるポットから魔人と魔人ウーマンが出てくるっていう状況なんです。
秋元 最初に魔人が佐和ちゃんだよって言われたときは、自分はOL役だと思っていたんですけど、魔人?しかも魔人ウーマン?かなりビックリして、でも組むのが去年一緒に共演した関口春菜ちゃんだったんで、これは面白くなるなって。
関口 去年「チェンジング★ホテル」(はちみつシアターとアリスインプロジェクトのコラボで2013年5月上演)という舞台で共演させていただいています。私は、佐和さんとチェンジングする役(人物が入れ替わってしまう)だったんですよ。
秋元 今回タッグを組んで、魔人チームを盛り上げて行きたいと思っています。

 

20140617-DSC_2687「チェンジング★ホテル」といえば、高田さんと鶴田さんも出演なさっていました。
高田 はい。はちみつシアターさんのテンションの高さは「チェンジング~」でわかっていたんですけど、こんなテンション高い舞台は初めてで、体力だけが心配です(笑)。家電の会社が舞台なんですけど、仕事の出来るOLの組スカイツリーと、仕事の出来ない組メトロに分かれていて、私はメトロの部署で、ダンスと音楽が大好きな役で。しっちゃかめっちゃか自由にやらせてもらっています(笑)
鶴田 私はスカイツリーで、真面目な役です(笑)。台本の設定では、乙女ゲームにはまってて彼氏が二次元って書いてありました(笑)。テンションが高いなって。頭のいいチームなので落ち着いた感じなのかなと思っていたら、落ち着いてない(笑)。楽しくやらせていただいています。

20140617-DSC_2354馬渕さんはいかがでしょう。
馬渕 私の役どころはスカイツリーの一人の、エロスまではいかないんですけど、氏家さんから「艶っぽく艶っぽく」って言われていて(笑)
氏家 一番色気の強いOLの役なんですよ(笑)
馬渕 いままで芝居で色気を使ったことがなかったんですよ。これまではお姉さんとか、全然しゃべらない役とか…。艶っぽい芝居をしたことがないので苦戦してます(笑)
氏家 馬渕ちゃんみたいなタイプが一番エロいんだって。如実に出してるわけじゃないから、エロを(笑)
馬渕 杉本彩さんの映像とか観て研究しています(笑)。壇蜜さんに頑張って近づきます(笑)

20140617-DSC_2320岡野さんもスカイツリーですよね?
岡野 はい。私も出来るチームのスカイツリーなんですけど、私はどっちかというとバカなメトロ側的なところもあって(笑)。頭はよくて努力家なんですけど。でも私は普段から割とちょっとバカな役が多かったので、今回も楽しくノリノリでやらせてもらっています。

田渕さんはどちらの組なんですか?
田渕 私はメトロチームのあゆべえ(高田)の上司。ただ人がいいってだけで、部下4人がキャッキャやっているのを常に見守っているという。
出来る組と出来ない組のキャスティングは誰がどういう基準で決めたんでしょうか?
氏家 私が決めたんですけど、基準は、見た目ですかね(笑)。この人はこっちに入れたら面白いかな、面白くないかなっていうのを考えて。あと私、逆にしたがる傾向があって(笑)。立ったときの姿とかも見て、スカイツリーって大きいしなってニュアンスで考えてみたり。

20140617-DSC_1960では、それぞれの役のみどころを聞かせていただけますか?
田渕 私は衣裳に注目していただけたらなと。まだ言えないんですけど、いろいろ話題の人になりますので、そこを観ていただければ。
関口 魔人ウーマンはSキャラの美人的な感じで、きれいどころの役なのですごく嬉しかったんですけど、そこが見どころですね(笑)。観てもらいたいなって(笑)。きれいどころということでキャスティングしてもらったんだなって信じているんですけど、それがすごく私の中でポジティブで(笑)。
高田 私の役は、一番自由に好き勝手に動いているっていうか、みんながしゃべってない時も一番自由に寝たりとか踊ったりとか好き勝手にやっているので、そんな自由気ままにやっているところを注目して見てもらいたいなって思っています。
馬渕 エロを目指すんですけど、エロの中に垣間見える私の素を見てもらいたいなって(笑)
岡野 すごく真面目な部分が前面に出ていると思うので、その真面目感、真面目なんだけど真面目じゃないところ?真面目過ぎてちょっと変人になってるかなというところもあるので。
20140617-DSC_2470鶴田 頭のいい人って、結構、変わってるところもありがちだと思うんですけど、そういうところが自分の役で出せたらいいなと思っています。
秋元 私はきれいどころの役なんですけど(全員が『えっ!?』)…っていうのは嘘なんですけど(笑)、はちみつシアターで時々男役をやるんですけど、ファンタジーのキャラの男役はたぶん初めてなので、そこを思い切り楽しみたいですね。結構ひょうきんなところもあるんですけど、決めるところは決めてかっこいいところを見せたいなと思っています。
氏家 私はジャスコって役で。主役の若尾ちゃんがすごく人のいい役なんですよ、真面目で、真っ直ぐで。私はその正反対で本当に嫌な役で。書いていて、嫌な部分しかないから、どうかなと思ったんですけど、ある意味、別のベクトルで真っ直ぐに生きている子なので、その真っ直ぐなところを見て欲しいですね。あまり嫌な役ってやっていなくて、今回久しぶりだったんですけど、楽しんでやりたいなって思います。
作品的な部分で言うと、はちみつシアターの描くファンタジーは、どうせならやっぱり普通のファンタジーとは違う感じのものを作りたいなと思っているので、「あ、これもファンタジーって呼んでいいんだ」っていう部分と、作る側としてファンタジーだからって思い切り甘えている部分も含めて、楽しんでいただけたらと思います。
若尾 衣裳が着こなし方とかそれぞれあって華やかですし、後半にダンスが出てくるんですが、そこでもみんなのスタイルの良さが見どころです。役としては、ただただひたすら全力投球な子の役なので、自分にもこうやって頑張っている時期もあったなって、懐かしく思ってくれればいいかなと思います。

チケット発売中! http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=24072
はちみつシアター公式サイト http://www.83theater.com/

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